2017年6月4日日曜日

緩まないの?ボルトにグリスを塗って締める理由

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先日購入したチタン製のキャリパーマウントボルトを組み付ける時に、「グリスを塗って、ボルトが緩まないのか?」と聞かれたので記事にしようと思います。


まず、ボルトにグリスを付ける理由ですが、一つ目は電蝕です。金属間の電位差によりイオン化傾向の強い金属から弱い金属に電子が移動し、電荷を失った金属原子がイオンとして溶け出すことで金属が腐食する現象が起こります。ステンレスの流しに空き缶やヘアピン等を置いておくと、あっという間に錆びたことがありませんか?同じことがバイクのボルトでも起こりうるのです。しかし、接触側の金属にグリスを塗布すると、グリスが絶縁体となり電位差腐食が防げます。
なので、場所にも寄りますが、ボルトにはグリスを塗布して使用します。

それがボルトにグリスを塗布する第1の理由で、2つ目の理由は


高い軸力を安定して掛ける為です。
ネジ部に摩擦の抵抗があった場合、トルクが摩擦に食われて、しっかりした軸力が掛からないのです。
オイルを塗って滑りを良くする事で摩擦係数が安定して、軸力がしっかり管理できます。
エンジン内部やシリンダーのスタッドボルトなど、軸力が重要な場所はオイルを塗って締めるのはこの為です。
実際にオイルを塗った場合と、塗らない場合を長いボルトで締め付けてみれば解るはずです。



さて、グリスを塗布する理由が解ったところで、文頭の「グリスを塗って、ボルトが緩まないのか?」の質問に戻ってみましょう。

良く勘違いしている人が多いのですが、(自分も昔はそう思ってました。)
ボルトが緩まない仕組みは、ネジ部のギザギザが噛み合って摩擦力で固定されているだけではありません。
ボルトを締め込んでいくと、ボルトの棒の部分が引き延ばされます。
ボルトの頭は座面にぶつかりますが、ねじ山部分はそれ以上にねじ込まれて行くので、結果ボルトは引き延ばされるというメカニズムです。
締め込みをやめると、引き延ばされたボルトが戻ろうとします。
 この戻ろうとする力(軸力)でボルトの座面に摩擦力が発生し、ボルトの緩みを止めている仕組みです。
これを弾性域締付と言います。
弾性とは、ある一定の範囲内で力を加えると変形するが、力を取り除くと元の形に戻る現象を弾性と呼び、このような性質を持つ材料を弾性体と呼んでいます。 

フロントフォーク周り等、バイクの動く部分や大事な部分をトルクレンチでトルク管理する理由は、ボルトが弾性域で引っ張られている時は軸力と締め付けトルクが比例します。
締め付けトルクを管理すれば、軸力を間接的に管理して締め付ける事ができるからです。
なので、ボルトにグリスを塗って滑りやすくしても、軸力が落ちなければ緩むことはありません。




ちなみに、下の画像は私のバイクではありませんが、バイクのキャリパーを固定しているボルトです。

奥のボルトがメーカーから取り寄せた新品のボルトで、手前のボルトが納車時から使用していたボルトです。
トルクレンチでトルク管理をしながら使用していましたが、長年の使用でボルトが伸び、ピッチが広がっています。


さて、塗るグリスも種類がたくさんあり、場所によって使い分けることが大切です。
何種類か簡単に特徴をまとめてみますと

リチウム 石けんグリス(万能グリス) 
もっとも広範囲に使用されているグリス。
広温度範囲で使用でき、耐水性・せん断安定性にも優れており、万能グリースとして一般工業・自動車・各種軸受・家電製品など広範囲に使われている。


ウレア グリス 
耐熱性と耐水性に優れている。
リチウム石けんグリースの耐熱限界を超える箇所に使われることが多く、自動車・電装部品にも多く使用されており、非石けん系の代表的なグリースです。



モリブデン グリス 
固体潤滑剤が入っており、極圧性に優れ二硫化モリブデンとグラファイトを配合しているので摩擦係数が小さい。
耐熱性にも優れているが水には弱い傾向もある。
バイクだと、マフラー、シリンダーヘッドのボルトに使用して固着を防ぐいだり、クラッチを組む時などにも使います。
モリブデンの最大の問題点は、固体なので、粒子が研磨剤になるので、ボールベアリング等の駆動部には使用は厳禁です。
エンジン内部などはエンジンオイルで洗い流されるのでOKです。


シリコン グリス 
ゴム、樹脂への悪影響がない(ゴムや樹脂系の回転運動部位に有効)


まだまだ、たくさんグリスは存在するのですが、全部紹介するとキリが無いので、この辺にしておきます。

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